富山県富山市に所在する弊店Blue Guitarsの自社工房にて製作・監修されるプライベートブランド「stilblu(スティルブルー)」。
トラッド(伝統)とモダン(革新)。サウンドや演奏性でしばしばカテゴライズされるギターという道具。
stilbluはその伝統と革新を独自のバランスで内包します。
KOGEI CANOE × GUITAR
地元富山県にゆかりのある職人との共同作品。高岡市のKOGEIとstilbluを掛け合わせる企画として製作したのが本器となります。
今回の「KOGEI」職人はSASA VINTAGE CANOEの笹嶋悟氏。富山県高岡市で生まれ育ち、大工として店舗や住宅の設計リフォームなどに従事し、現場で培ってきた経験と設計デザインで獲得した創造力を武器に、自身の会社「株式会社ホームスタイルデザイン(homestyledesign)」を創業。homestyledesignでは、富山県内の様々なショップや住宅の設計施工を行っており、それぞれのシーンにフィットした空間デザインが施されています。ぜひhomestyledesignのウェブサイトをご覧ください。
職人笹嶋氏はギターにバイク、釣りなど趣味の世界にも熱を入れており、それぞれにまつわる文化に合わせたライフスタイルを楽しんでおります。富山という土地柄もあり、山、川、海に恵まれ、自然や音を楽しめる環境が揃っています。彼の人生の楽しみ方にはロマン憧れを抱きます。
その中でもライフワークとして製作するウッドカヌーは、古き良き時代のギアを「現代」で楽しめる強度デザイン共に素晴らしいクオリティ。
本器はウッドカヌーのボトムをトップ材に使用し、1Pアッシュを贅沢にもくり抜きバックとして組み合わせたシンライン。トップに在るウッドのカラーと風合いで形作られるチマヨ柄は、SASA VINTAGECANOEのウッドカヌーにもあるトレードマーク。トップ材の製作方法もカヌーと同様の手法を取っており、カヌーの湾曲を作り出すビート&コーブ加工を施したストリプ材で製作。ボディエンドから継ぎ目がご覧いただけます。トップ自体はフィニッシュ合わせて5mm程度となっており、素材の軽さと柔らかさが感じられます。それもあって非常にアコースティカル。ホロウの響きが直に身体に伝わり、まるで生楽器を扱っているかのような錯覚に陥ります。
トップだけでなくバックパネルも製作いただき、stilbluで純正採用しているブラスビスでマウントします。
ネックはシンプルにメイプルを採用。実直に伝達するネックであることを利用しボディの鳴りを最大限に生かすような方向性となっています。
今回製作するにあたりstilbluではまずないピックガードレスで製作を進行。トップ接着とシルエット以降の加工はstilbluの他個体と異なり、本器製作に合わせたテンプレートの製作と木工加工を施しています。
シンラインのエアー感とリニアな反応をアンプアウトで楽しめるようピックアップはstilblu IRIS等に使用するVictory Pickupを前後に採用します。ピックアップのマウントをダイレクトマウントにしているのも上記のサウンドクリエイトの為。配置やスラントはトラディショナルに準じて数値はさほど変えておりません。独特のコンプレッションと音の立体感が特長的である種ジャズギターとしても楽しめる一本となっています。
今回のフィニッシュはオールラッカー。ストリプ材はFRPで塗装をすることが多いですが、塗料で固めてしまう関係上ギターには不向き。その為ラッカーを厚塗りしサウンドと強度を保つ手法を取っています。最後の仕上げはカヌーと同様のハーフグロスに仕上げました。
本器の特徴の一つでコントロールの配置がよくあるものとは異なり、ブリッジ近くのコントロールしやすい位置にマスタートーンを配置。少し離れた位置にフロントボリュームとリアボリュームを配置します。ボディジョイント6弦側テレキャスターデラックスに近い位置にトグルスイッチを配置しました。
重量2.713kg
近年製作されるアッシュを採用したギターの中では異例の軽さではないでしょうか。トラディショナルなシェイプによる馴染みやすさとこの重量感が心地良さを感じていただけます。ベッドルームやリビングに置いていただけるような、ライフスタイル寄り添った一本に仕上がりました。
written by Ryota Hayakawa